京都市下京区に2016(平成28)年4月29日、京都鉄道博物館がオープンした。
しかし、元々はそこに梅小路機関区があった場所で、その昔は東海道線や山陰線を行き交う蒸気機関車が数多く在籍している所でもあった。
その梅小路機関区にある扇形庫と転車台(ターンテーブル)を施設の中心に据えて、当時の国鉄が蒸気機関車の保存・維持を目的に鉄道開業100周年の1972(昭和47)年10月10日にオープンしたのが梅小路蒸気機関車館だった。
その後、時代は平成に変わって、京都鉄道博物館が併設されることが決まり、梅小路蒸気機関車館は2015(平成27)年8月30日をもって、いったん閉館となった。そして、新たに京都鉄道博物館となった訳だが、「梅小路蒸気機関車館」だった頃は大人で500円もしなかった入館料が3倍以上に値上がりしてしまった。
1994(平成6)年1月の正月、梅小路蒸気機関車館を訪れた。正月に合わせて、いつもは車庫内に展示されているSLの前の部分を外に出す「頭出し」が行われるからだった。
梅小路蒸気機関車館は、開館してしばらくは蒸気機関車ブームの余韻もあって多くの人でにぎわっていたが、次第に入館者が減少していった。
国鉄が民営化されてJRになってからは、様々なイベントを催して入館者を増やそうという施策が行われたが、新年の「頭出し」もそうした中の一つだった。
1994年は、平安遷都(794年)から1200年ということで、京都市内ではそれに合わせたイベントが数多く催されていた。
SL「ハチロク」こと8630にも、平安遷都1200年を記念したヘッドマークが飾られていた。
ずらりと並ぶ頭出しされたSLを見て、何か物足りないな、と思っていたが、それが「何」なのか、なかなか気付けないでいた。
そして、それが「日章旗(=国旗、日の丸)」であることに気付いた。そう、いつも「頭出し」の時は、日章旗が飾られていたのだった。
足下に束ねられた旗を見て気が付いた。
とはいえ、日の丸が付いてない状態は、それはそれでノーマルな状態ではある。
ただ、この日は営業日ではなく、展示運転の予定が無かったからなのか、煙を上げているSLの姿が見られなかったのが残念だった。
構内の片隅には、これから日章旗を飾り付ける作業を行う有志の方々が集まっておられた。作業をするのは、大半がボランティアの皆さんだったのだ。
帰りに京都駅へ立ち寄ると、1番ホームに、681系の特急「サンダーバード」が停車していた。
その後、国鉄時代から長く活躍を続けていた485系を駆逐することになる681系も、この頃はまだ先行試作車しか存在しておらず、主に臨時列車として走っていたので逆に珍しい存在だった。
この頃、京都駅は新「駅ビル」への建て替え工事の真っ只中にあった。旧1番ホームと2番ホームの間には2本の通過線があったが、そのうちの旧1番ホーム寄りの1本の上に新たに仮設の1番ホームが作られ、旧1番ホームは駅ビル建設のために取り壊されていた。そして、仮設の1番ホームの下には、まだ一部で通過線当時のレールが残っていた。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。