2010(平成22)年1月末、北陸線で季節運行されていた「SL北びわこ」号を撮影に出掛けた。
ところが、当日の朝に主な有名撮影場所を訪れてみると、どこも凄い人で入る余地が無かった。仕方なしにウロウロする羽目になった。

まず最初に向かったのは、背景に伊吹山の見えるポイントへ。この辺りは、沿線に雪はほとんど見られなかった。

特急「しらさぎ」が目の前を通過して行く。その昔、食堂車を組み込んだ12両編成で走っていた姿を見た記憶があっただけに、たった5両の姿に、どこか寂しさを感じた。
間もなく、C56-160号機にけん引された「SL北びわこ」号が姿を見せたが、このとき「ハッ」と気が付いた。そう、ここは平坦区間なので肝心のSLが煙を吐いていないのだった。

次に入ったポイントは、コース唯一の上り坂。しかし、当然のことながら人でいっぱいだったので、空いている場所を探す。

再び名古屋行きの特急「しらさぎ」が目の前を通過して行った。

2010年3月に電化開業することになっていた小浜線用の125系電車が、このときは北陸線で使われていた。
ようやく「SL北びわこ」号が姿を見せたが、びっくりするぐらい「遅かった」。非力なC56で12系客車5両を、この上り坂で引っ張るのは、そもそも無理があるようだった。

再びタクシーに乗り、追い掛けてみる。「北びわこ号」が遅いので、普通に併走する国道を走っているうちに、あっという間に追い付いた。

ドラフト音と汽笛に驚いて、田んぼにいたコハクチョウが飛び立っていった。(注*写真の左の方に写っている)

終点の木ノ本駅に着くと、ちょうど折り返しに備えたEF65PFが機回し作業中だった。
余談になるが、この日の翌朝、自分が撮った「SL北びわこ」号の写真が新聞の1面を飾った。それを見た母親が「ついに仕事にしちゃったね」と感慨深そうに一言。自分が小学生だった頃、何度となく鉄道写真の撮影に付き添ってくれた母は、思うことがあったようだ。その母も5年前にこの世を去った。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。