1986年5月27日(火) 叡山電鉄・市原駅&貴船口駅

京都市内では、4月の桜が終わり、5月の葵祭の頃になると、いわゆる「新緑がまぶしい季節」を迎える。

そんな新緑の季節を迎えていた1986(昭和61)年5月、キヤノンからT90という新型カメラが発売されることになり、縁があって、その試作機を貸与されてテスト撮影する機会に恵まれた。
 最終的には、T90というカメラは実質的にキヤノンが発売するMF=マニュアルフォーカスの最後の機種になる訳だが、その前年、1985(昭和60)年にミノルタから発売されたα7000というAF=オートフォーカスが搭載された初めての一眼レフカメラが登場したという衝撃がさめやらない頃ではあったので、なんで今さらマニュアルフォーカスの新型カメラを、と言われていたのも確かではあった。

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この日、そのキヤノンT90を手に、叡山電鉄市原駅を訪れた。

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平日の昼下がり、デオ200型の単行が走っていた。

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現在、叡電の鞍馬線では2両編成ばかりが行き交っているが、当時は昼間のお客さんの少ない時間帯は、単行が多かった。

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1両編成の単行だが、当時はワンマンカーが存在しなかったので、車掌さんも乗っていた。

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ここで、貴船口駅の方へ移動する。今では「紅葉のトンネル」として有名な区間である市原-二ノ瀬駅間も、当時は特別な区間でもなんでもなかった。

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貴船口駅のホームは、鞍馬寄りの部分が橋上に設けられており、そのまま鉄橋につながっている。ちょうど当時の最新型であるデオ600型の単行が姿を見せた。

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その貴船口駅の入り口は、最近になって新しく手直しされたが、雰囲気的には今もそれほど変わってはいない。

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平日の昼間ということもあってか、観光客どころか、利用客の姿も見当たらず。

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再びデオ600型がやって来た。

この翌年(1987=昭和62年)、キヤノンもEOSシリーズというオートフォーカスの一眼レフを登場させたのだが、当時のオートフォーカスは、今ほど使い勝手が良くなく、プロカメラマンの多くは、世の中が昭和から平成に変わっても、しばらくはマニュアルフォーカスを使い続けている人の方がまだ多かった。また、キヤノンに関しては、EOSシリーズの登場とあわせて、レンズマウントを変更したことがプロカメラマンだけでなく、カメラ愛好家の間でも大議論を呼び、マニュアルフォーカス機の最終モデルであるT90もかえって人気が上がり、さらには旧型マウントのレンズが一時的に品薄になる現象まで起きた。
 しかし、1990年代の半ばを過ぎて、オートフォーカスの性能が上がると共にプロカメラマンもオートフォーカスを多用するようになった。そして、フィルムカメラがデジタルカメラに移行する大きなきっかけともなった、1999(平成11)年のニコンD1の登場の頃には、もはやマニュアルフォーカスで撮影するカメラマンはほとんどいなくなっていた。

振り返ってみると、あの頃は日本製カメラがまさに日進月歩の時代で、今よりはワクワク感に満ちていたようにも思う。

鉄道関連ニュース

京都新聞の撮り鉄カメラマン“カジやん”が、1978(昭和53)年から現在に至るまで、京都を中心に日本全国で撮影した鉄道写真を紹介します。

注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。