香川県にある高松空港の隣に「さぬきこどもの国」という子ども向けの施設がある。そこにはYS-11といった飛行機の他に、かつて高松琴平電鉄で走っていた60形62号という「日本一現役の長かった電車」が保存展示されている。
この電車は、京浜電気鉄道デ37として1913(大正2)年に製造された。当時は、オープンデッキ付きの木造車であった。その後、戦時中の合併で東京急行電鉄デハ5105となったが、戦後の1948(昭和23)年、高松琴平電鉄に移籍した。
戦時中の酷使で、木造の車体が崩壊寸前の状態だったため、1953(昭和33)年に台枠のみを拡幅の上、流用して、車体を新造した。当時としては斬新なデザインだった。
そして、製造から89年が経った2002(平成14)年12月、62号は引退したが、同型車は2007(平成19)年11月まで走り続けた。
全国各地に保存されているSL=蒸気機関車を中心とした鉄道車両が「朽ちて(錆びて)」あえなく解体されてしまう事例が増えている今、この車両は、屋根が付いているせいか、保存状態は極めて良好である。貴重な歴史遺産である京都市電の各車両を保存展示している京都市も、もう少し見習って欲しいものである…。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。