ちょうど鉄道の写真を撮り始めた頃、自宅から最も近い所を走っていた鉄道車両と言えば、それは京都市電だった。
梅雨入りが間近に迫った頃、何かで午前中授業だった日の放課後、市電に乗り込んで、烏丸車庫へ向かった。
上の写真は、北大路通を走る市電の車内から撮ったもので、ちょうど府立大学前の信号で引っ掛かった時にシャッターを切ったものだ。
中央に市電の線路があるにも関わらず、その横にクルマが3列も並んでいるのが、今から思うと奇異に映る。そんなに道路って広かったっけと思う訳だが、当時のクルマは今ほど車幅が無かったからこそと言えるだろう。
烏丸車庫前の電停(=電車停留所)で市電を降車する。今は歩道に屋根がある場所だが、こうやって見ると、いつの間に出来たのだろうか。
烏丸車庫の前に着くと、ちょうど1両の電車が出庫の準備をしているところだったが、近くの窓口で「写真を撮りたいんですが」と声を掛けたものの、カメラを持った小学生を構内に入れてくれる筈もなく、この入り口までだった。
この烏丸車庫は、今ではショッピングセンター(北大路ビブレ)になっているが、市電の車庫だった場所は、そうして大規模な施設に転用されたケースがとても多い。
京都市電は、この年の9月いっぱいで全廃されることが既に決まっていた。残すところ、あと4ヶ月弱の時期だったが、いつもと変わらぬ日常がそこにはあった。
帰ろうと思ったら、通常運行している6号系統に続いて、番号表示板に系統番号ではなく、真っ白な板を挿した市電が2両、続けてきた。これは「貸し切り電車」で、当時、市内の小学校などが遠足とかで、よく利用していたものだった。中でも、府立植物園前で大勢の子どもたちが乗り降りしている貸し切り電車をよく見かけたものだった。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。