自分が中学~高校生だった1980年代の頃、自宅の近くを走る叡山電車には、昭和初期に製造されたデナ21形という「名物電車」の人気が高く、日本全国から写真を撮りに来るファンの姿があった。
同じように、その当時、昭和初期に製造された「名物電車」が走る路線として有名だったのが長野県の上田交通だった。
ここには通称「丸窓電車(モハ5250形)」が走っていて、その名の通り、ドア横に丸い窓があることで知られていた。
1982(昭和57)年の夏休み、鈍行列車だったら日本全国どこへでも行ける「青春18のびのびきっぷ(→後の青春18きっぷ)」を使い、その上田交通を訪問した。
上田駅に到着すると、ホームで待っていたのは丸窓電車ではなかったが、それに乗って終点の別所温泉駅へ向かう。
別所温泉駅は、見るからに特徴的な駅舎が印象的だったが、その姿は35年近く経った今も(駅舎入り口に自販機が設置されたり、写真左の改札口が無くなった以外は)何ら変わっていないようだ。
ここで、ようやく丸窓電車と初対面した。
叡山電車のデナ21形と同じ「匂い」がしたが、全体的な印象は、ちょっとくたびれた感じだった。
同じローカル私鉄でも車両の状態は千差万別である。自分にとって身近な叡山電車は比較的、綺麗に保たれていた方だったから、それと単純に比較するのは可哀想かもしれないとも思えた。
モハ5250形の丸窓は、外観上は傷みが感じられたが、車内に入って見ると、ニス塗りの木目が美しく、その印象は全く違うものだった。
平日の昼間でお客さんの数は少なく、真夏にエアコンも無い車両だったが、いざ走り始めると、空いている窓から心地良い風が吹き抜けていった。
上田交通を訪問後、中央東線から中央西線を乗り継いで名古屋まで移動したが、その道中、最も好きな電車だった80系に出会ったり、まだ当時は活躍していた荷物電車や荷物列車の姿も見かけた。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。