
神戸と下関を結ぶ山陽本線だが、神戸を出て次の駅である兵庫駅から伸びる、僅か2.7kmの支線がある。
通称・和田岬線と呼ばれていて、かつては中間駅が1つあったものの、今では起点の兵庫駅の次は終点和田岬駅である。そんな1駅間、10分と掛からない路線なのに、朝夕はとんでもないラッシュになることでも知られている。
終点の和田岬駅の近くに「三菱重工業」の工場があり、この路線の乗客の大半は、その従業員である。そのため、朝は兵庫駅→和田岬駅が大混雑し、その逆方向はガラガラになる。もちろん、夕方はその真逆になる。

山陽本線兵庫駅の通常のホームは高架上にあるが、和田岬線のホームは地平にあった。
この路線は、旧型客車が最後まで活躍した路線でもあった。

だが、ここで使われていた客車は、ちょっと他では見られないものだった。それは車内に入ると一目瞭然…

まるで戦時中の客車みたく、座席が殆ど無いのである。こんな車両が、平成の世になって間もなくの1990(平成2)年まで走っていたのだった。

立ち席がこれだけあればお客さんは悠々乗れるかと言えば、そうではなかった。
デッキのドアは開け放たれ、ステップから体がはみ出した状態で、まさにぶら下がって乗車する姿まで見られた。その光景は、まるで太平洋戦争後の混乱期のようだった。
自分が訪れたのは日曜日だったので、そんな混雑はどこにも無かった。
和田岬駅に駅員の姿も見当たらなかったが、機関車の付け替えを行う「機回し」がのんびりと行われていた。
ちなみにラッシュタイムは機関車が前後に連結され、プッシュプルで運転されていることが多かったらしい。

注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。