かつて、昭和30年台後半から昭和40年台の前半頃、バスのシステムを流用した鉄道車両が各地でデビューしていた。
これは、鉄道車両に比べて軽量な構造だったバスの車体と、バスのエンジンをそのまま流用したもので、コスト削減の意味も大きかった。ただ、当然のことながら良いこと尽くしという訳でもなく、代わりに耐久性が犠牲になった。
この設計思想は、ディーゼルエンジンを用いた気動車だけでなく、市電などにも応用されたが、その多くが短命に終わったのは、やはり鉄道車両としては耐久性が著しく低かったことにほかならない。
そんな中で、長らく生き残っていたのが、青森県を走っていた南部縦貫鉄道(野辺地-七戸)のレールバスだ。
南部縦貫鉄道には、キハ101・102(=共に1962年富士重工業宇都宮工場製造)という2両のレールバスが在籍しており、長らく地元住民の足として活躍していた。
そのレールバスも製造から35年が経ち、ついに引退の日を迎えることとなった。
でも、それは老朽化でどうしようもなくなって引退という訳ではなく、肝心の線路が廃止されてしまうことになったのが原因だ。
レールバスは、その名の通り、バスのシステムを流用しているから、運転席は一味違っていた。よく見れば、クラッチ(左足元)やシフトレバー(右手前)があり、見た目ではブレーキだけが一般的な鉄道車両と同じだった。
積雪による運行障害に備えてか、スコップも常備してあった。
車内もバス同然だったが、何より驚いたのは、その乗り心地の悪さ。それもそのはず、この車両は小さな貨車などと同じ2軸しかない構造なのだ。
元から耐久性を犠牲にして作られた車両だけに、35年も使うことは想定されてなかったことだろう。
車体のあちこちに歪みが見られ、隙間風が寒かった。一応、ガムテープ等で目張りはしてあったが…。
1997年5月6日に南部縦貫鉄道は運転を休止し、2002年8月1日に廃止となった。
ただ、このレールバスは、幸いにも廃車→解体されること無く、旧七戸駅構内で保管された。そして、運転休止から20年近くになった今も大切に動態保存されている。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。