去り行く車窓

物心ついた時から鉄道好きだった自分だが、幼稚園の頃は鉄道の絵ばかり書いては保母さんを悩ませていたらしい。
 その頃に書いた絵が一部残してあるが、なぜか車両ではなく、線路とか架線柱ばかりが描かれていた。どうも幼少の頃の自分は、車窓から見えるレールや架線の造形に目を奪われていたらしい。

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今では日本全国のJR路線上から、ほぼ姿を消してしまった客車列車だが、電車や気動車と違って、最後尾の車両から過ぎ去っていく景色を見るには好都合だった。
 なぜなら、電車や気動車の多くで最後尾部分全体が乗務員室になっているのに対して、客車には(車両中央に)自由に立ち入れる増結用の「貫通路」があったからだ。

この貫通路から過ぎ去っていく景色を楽しむのが、運転席の真後ろに陣取ることよりも好きだったところは、恐らく大半の鉄道ファンとは違っていたと思う。

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北海道だと、真っ白な雪原に真っ直ぐな線路、そして白樺の林が広がっていた。積雪地域では走行音が吸収されてしまうため、妙に静かなのだが、北海道はパウダースノーで雪中に空気の隙間が多いためか、より静かに感じられた。そのせいで列車の音にあまり驚かされないのか、線路沿いに佇むエゾシカやキタキツネ、タンチョウヅルを見かけたりもした。

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夜行列車に乗れば、当然のことながら夜景が楽しめた。通過駅があれば、ホームの上でカンテラ(携帯式ランプ)を手にした駅員が、自分の乗る列車を見送る光景も見られた。

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物思いにふけるには、単線のレールが良い。この長い道は、どこへ続くだろうとか、意味のないことを考える、その無駄さに、逆に意味があるようにも思えた。
 さらに駅を通過する時など、次々と右や左に線路が分かれていき、しばらくして再び右や左から合流する、その幾何学模様が見た目にも楽しかった。

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注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。