小学生の頃から一人旅をしていた自分は、日本の中で足を踏み入れたことが無いのは沖縄県だけである。
その理由は簡単、鉄道で行けないからだ。
日本全国に鉄路を張り巡らせているJRは、国鉄時代に比べると、その路線数は減ったが、それでも北海道から本州、四国、九州に至るまで、線路のない都道府県は(沖縄県を除き)一つも無い。

そんな中で、日本最南端の駅として知られる指宿枕崎線の西大山駅を2007年の冬に訪れた。

バックに見える開聞岳が美しいが、かつて知覧から沖縄へ向けて飛び立った特攻隊員たちは、この開聞岳を見ながら、戻ることのない旅に飛び立っていった筈である。

駅構内には、タクシーで訪れていた観光客の姿があり、記念写真を撮っている光景が目に入ったが、列車の方には乗客の姿が数えるほどしか見えなかった。

駅の周りには菜の花畑があり、2月半ばというのに春爛漫という感じがした。実際、京都の冬とは比べ物にならないぐらい暖かかった。

無人駅で、駅前に土産物店などがある訳でもなく、本当に静かな駅だった。列車が停まっていなければ、鳥のさえずりぐらいしか聞こえないぐらい。

列車が発車し、ディーゼルエンジンの咆哮も、次第に遠ざかっていった。ホームにいた観光客(?)が、列車の姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。