2009(平成21)年に勤務先が滋賀県に変わったのを機に、滋賀県北部の「湖北路」を走る「SL北びわこ号」を撮影するため、季節を問わず何度か足を運ぶようになった。
初めて行ったのは、2010(平成22)年の1月末だった。
JR北陸線の米原~木ノ本間で運転されるSL北びわこ号だが、この辺りには土地勘が全く無く、どこが良い撮影場所なのかも分からなかった。
走り回って、ようやくのことで鉄道ファンが数多くカメラを構えている撮影名所を発見して、その仲間に加えて頂いた。
運転区間の中で、唯一、峠のような場所だったのだが、見た目は緩やかな上り坂だ。しかし、非力なC56型蒸気機関車には、たった5両の客車でも引っ張って上るには大変な場所で、いかにも必死で走っている感が漂う、まさにノロノロ運転で姿を見せたのだった。
とはいえ、田園地帯が広がる平坦な区間では、軽やかに走っていた。
白く雪に覆われた田んぼには、白鳥がいて、汽笛に驚いて飛び立つ光景も見られた。
次に訪れたのは、2010(平成22)年の9月だった。
当日は30℃を超える暑さで、超望遠レンズで狙うと、ピントが合わずに苦労した。
その次に訪れたのは、2011(平成23)年の1月末だった。この年の冬は雪が多く、その日もたっぷり積もっていた。
真っ白な雪と、真っ黒なSL。
その正反対な組み合わせの強烈なコントラストが、なぜ多くのSLファンの心を捉えるのか、この時、初めて分かった気がした。
自分が鉄道写真を撮り始めたのは、SLブームが終わった直後だった。
あと数年、生まれるのが早かったら、自分も必死にSLを追っ掛けて、あちこちへ撮りに行っていたのだろうか。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。