最近でこそ日本各地のJR路線上でSL=蒸気機関車の運転が盛んになったが、昭和時代の終わり頃、それは山口線での定期運行を除けば、滅多に見られないものだった。
1988(昭和63)年の春、京都と長浜を一往復する「長浜楽市」号というC57型SLが引っ張る臨時列車の運行が発表された。
その当日、超望遠レンズを携えて山科駅まで撮影に出掛けた。

ホームに着くなり、DD51がけん引するお座敷列車「あすか」が京都の方を向いて通過していった。
このお座敷列車「あすか」は、1986(昭和61)年末に山陰線の余部鉄橋で落下事故を起こして廃車となった「みやび」に代わるものとして1987(昭和62)年に登場したものだが、今年(2016年)まで残っており、この7月と10月に廃車のため吹田総合車両所に回送されたというニュースが流れていた。ただ、近年は全く運行されていなかったようだが…。
当時は黙ってても何本もやって来たのが485系の特急「雷鳥」だったが、それに混じって、これも今年(2016年)の3月まで一日に1本だけ京都を通っていた特急「しなの」(381系)が通過していった。

しばらくすると、今度はEF65にけん引された「あすか」が、先ほどとは逆方向にやって来た。
どうやら京都駅で機関車を付け替えて、方向転換までしたらしかった。

ようやく目当ての「長浜楽市」号が姿を現した。

この「長浜楽市」号は、京都と大津の間にある距離の長いトンネル=東山トンネルと逢坂山トンネルをくぐる際、SLの煙が問題になるというので、実は最後尾にEF65型電気機関車を補機として連結していた。
つまり、この区間に関しては実質的にはプッシュされて走っていたらしい。そのため、比較的、ゆっくりとしたスピードで目の前を通過していったのだった。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。