概して地方のローカル私鉄で走っている車両というものは、オリジナルのものは少なく、その多くで国鉄や大手私鉄から払い下げられたものがよく見られた。
その光景は今もそれほど変わらない。
1980年代のこと、青森県を走る弘南鉄道の場合、戦前製の旧型国電が数多く在籍していた。
車両の長さが17mで、地方のローカル私鉄には手頃な大きさだったのだろう。弘南鉄道の他にも日本各地で、同様に払い下げられた古い電車が走っていた。
車体にはリベットの突起が目立っていた。戦後になっても、昭和30年台になるまでの鉄道車両には、リベット止めの車体が見られたが、その後、溶接が主流になった。ところが、なぜかバスの方は昭和50年代になるまでリベット止めの車体がよく見られたものだった。
国鉄時代は、ぶどう色一色のことが多かっただろうが、弘南鉄道に来てからはツートンカラーに塗り分けられていた。
年式の割には手入れも行き届いていて、外観はキレイだったが、車内に乗り込み、電車が発車すると、釣り掛けモーターの「ギーッ」という音が古さを感じさせた。
冬に訪れたので、弘南鉄道の沿線には雪が積もっていた。
周辺には田園風景というよりは、リンゴ畑の方が目立っていて、京都から来た自分には、その風景が印象的だった。
雨樋いが上の方にある、張り上げ屋根の車両も見受けられた。
細かな分別が好きな、詳しいマニアックな人たちには、きっと宝庫のような路線だったことだろう。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。