JR在来線の線路幅は、いわゆる狭軌と呼ばれる1067mmだが、新幹線は標準軌と呼ばれる1435mmになる。でも、日本国内には、その狭軌より狭い線路幅の鉄道がある。
その一つが762mmの線路幅で、一般的にナローゲージと呼ばれているのだが、かつて日本国内には、そのナローゲージの路線が数多く存在していた。それらは「軽便鉄道」と称され、規格が低いことで建設費用も大幅に安くできたので、日本全国に張り巡らされた国鉄路線を補完する形で、まだ自動車が普及していなかった戦前を中心に、各地に建設されたのだった。
しかし、戦時中に「不要不急路線」として金属供出で撤去されたり、戦後になるとモータリゼーションの波に押され、高度成長期の頃には各地で姿を消していった。
その中で、時代が平成になるまで生き残っていた路線がいくつかあった。その一つが、近鉄の北勢線だった。
その近鉄北勢線で、61年に渡って活躍していた220系という電車が姿を消すことになったのが1992(平成4)年の夏だった。
ナローゲージゆえ、向かい合わせに座れば、膝がぶつかりそうな狭さの車内だが、外観も幅が狭いので縦長に見え、パンタグラフが異様に大きく見える一方で車輪が小さく見えて、どこか不格好だった。でも、そこがユーモラスという感じがしたのも事実。
訪れたのは9月6日だったが、既にお別れのヘッドマークが飾られていた。まだ残暑厳しい中、クーラーも付いてない電車は、窓を全開にして走っていた。
数少ないナローゲージの路線だが、ローカル私鉄で経営が厳しいゆえに、何度も廃止の話が出たりした。が、その後、近鉄から三岐鉄道に移管されて、路線そのものは今も存続している。
写真の220系電車も一部が保存され、今も姿を見ることができるのは嬉しい限りだ。
注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。