2011年3月26日(土) 京阪・京津線

2009(平成21)年から2011(平成23)年にかけて、職場が大津市だった時期があった。
 京都市内からだと、通常は地下鉄やJRなどを利用して電車を使うか、人によっては自動車で通勤するところだが、自分は健康を考えて毎日、自転車で通った。
 峠を2つ越えなければならないが、あえて雨の日も、雪の日も自転車で通った。

京都から大津へ向かうには、いくつかのルートがあったが、時間的余裕や自身のコンディションも踏まえて、日々コースを選択して通っていた。
 最も容易なルートは、蹴上から逢坂山を越える旧東海道のコースだったが、他にも小関越や山中越などもある。

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逢坂山を通るコースには、京阪京津線が並行して走っていた。かつて高校生の頃、琵琶湖へ湖水浴へ行く際、自転車を利用して通ったコースでもあった。
 峠のピークに近い所に大谷駅があるが、昔から近くに有名な鰻(うなぎ)屋さんがあって、大きな看板が掲げられていた。

その大谷駅は坂の途上に設けられた珍しい駅で、40‰(パーミル、1000mで40m上る勾配)という急勾配の上にあり、日本の一般的な鉄道・軌道では最も急傾斜に設けられた駅でもある。
 急勾配上の傾いたホームに設けられているベンチは、左右で脚の長さが異っているほどだ。

これだけ急な勾配上に、あえて駅を設けるのは異例のことで、特別な許可を得て駅が開業した経緯もある。駅の必要性と場所の関係で、止むを得ず、そういう本来は不向きな場所に駅が設置されたようだが、そこへ停車するのも、そこから発車するのも、電車の運転士にとっては、きっと大変なことに違いない。

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大谷駅の近くには逢坂山トンネルがある。超望遠レンズでトンネル内をくぐり抜ける電車を撮る。

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最大で61‰という急勾配、最小半径40mという急カーブ、さらには道路の真ん中を走る併用軌道のある路線。山岳鉄道に路面電車の要素まで組み合わさった独特の路線であるが、そこを走っているのが(路線規模に見合わない?)4両編成の「地下鉄に直通する車両」だけという、何とも異色の鉄道ではある。

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随所にある急カーブには、通過をスムースにするために、散水装置が設置されている。
 電車が近付くと、自動的に噴霧が始まる仕組みになっている。

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京都市営地下鉄の東西線と乗り入れを行う前の京津線は、2両編成の電車ばかりだったが、急行や準急などもあり、その昔には大阪まで直通する「びわこ号」という列車もあって、車両もバラエティに富んでいたが、今では前述のように4両編成の800系しか姿を見ることが出来なくなってしまった。

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日が暮れると、散水されている急カーブがヘッドライトに浮かび上がる。
 急カーブが多く、急勾配があることもあって、京都と大津を結ぶ路線としてはスピードでJRに太刀打ちが出来ず、京津線の営業成績は芳しくない。
 しかし、「山岳鉄道と路面電車の要素があって、走っているのが地下鉄車両」というマニアックな背景を生かして、もっと何らかのアピールをすれば、観光的な要素でも盛り上げられる気がする。

話は戻って、当時、通勤で何度も通った逢坂山だったが、いつか行こうと思っていた鰻屋さんには、ついに一度も足を運ぶことなく、大津での勤務が終わってしまった。

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注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。