1983年3月27日(日) 飯田線

1983(昭和58)年の春休みは、既に新型へ置き換えが進み、夏には廃止が決まっていた飯田線の旧型国電に乗りに行くことにしていた。
 飯田線には、豊橋から辰野まで片道7時間以上もかけて直通する普通電車が何本かあり、そのうちの半分ぐらいで旧型国電がまだ活躍していたのだった。

「青春18きっぷ」を手にして、3月27日(日)の朝、東海道線の上り始発電車に乗って、豊橋へ向かった。
 京都から大垣行きに乗り、そこで豊橋方面行きに乗り換えたのだが、名古屋を過ぎてから、予想外のことが起こった。
 岡崎駅近くで踏切事故があったとのことで、共和駅という所で乗っていた電車が停車したまま動かなくなったのだ。

このままでは目的の旧型国電に乗れないと思い、急遽、下車してタクシーを拾い、「(並走する)名鉄の駅だったら、どこでも良いので行って下さい」と運転手に頼み込んだ。
 タクシーを使ったのは非常手段だったが、元から所持金が少なかったので、内心は「いくら掛かるのだろう」とびくびくしながら、カチカチと上がっていくメーターとにらめっこしていた。

到着したのは、前後駅という変わった名前の駅だったが、そういうことを気にする余裕は無かった。
 ところが、ここは普通しか止まらない駅だった。

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イライラして待っていると、流線型をした電車がやって来た。珍しい、名鉄3400系電車だった。

普通電車に乗って、豊明駅という大きな駅へ移動し、そこで豊橋行きの特急か急行を待つことに。

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その間に、鉄道ファンに人気のあった名鉄のパノラマカーが次々と通過していった。

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ようやく豊橋行きの特急に乗り込み、豊橋駅へ急いだ。その豊橋駅は、名鉄と国鉄飯田線がホームを共用しているため、飯田線に乗り換えるには便利だった。
 しかし、その豊橋へ向かっている途中で、目的の電車が豊橋を出発する時間を既に過ぎていることに気が付き、慌てて持っていた小型の時刻表を調べる。何とか、辰野駅まで直通する中で、最終の電車に乗れそうだったが、それは旧型国電ではなかった。
 だが、辰野からは新宿行きの夜行鈍行列車に乗る予定だったため、残念ながら、それに乗るしかなかった。

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豊橋駅に着いたが、辰野まで直通する電車の発車時刻までは、かなり余裕があった。
 ホームには珍車のクモハユニ64を連結した豊川行きの普通電車が止まっており、とりあえず、それに乗ることにした。

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車内には誰も居なかった。なぜか広告の類が殆ど見当たらず、どこか殺風景な車内に見えた。

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豊橋駅を出発すると、近くの構内に新型の119系と165系、さらにはクモニ83とかEF10の姿が見えた。

クモハユニ64での旅はすぐに終わった。豊川駅で下車し、後続の辰野行き普通電車を待って、まだデビューして間もない119系に乗り込む。

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山間にある小和田駅で、対向の旧型国電と交換。ホームでは駅員と乗務員がタブレットの受け渡しを行っていた。

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愛知県、長野県、静岡県という3つの県境が接する佐久間ダムのダム湖に面した小さな駅で、一日の乗降客はふた桁あるかどうかぐらいだと乗務員の方が仰っていた。
 単線でタブレット交換があるので、駅員が常駐しているとのことだったが、翌1984(昭和59)年には無人駅になった。

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辰野へ向かう長い旅の道中、旧型国電が留置してある駅がいくつもあった。
 それが現役なのか、もう役目を終えた後なのか、ぱっと見ただけでは分からなかった。

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この時、お世話になったのは、デビュー間もない119系だったが、座席に座って、開く窓から下へ手を伸ばして届くところに「白い帯」が粘着テープで貼ってあった。ところが、乗り込んだ乗客が退屈しのぎでしたのだろうか、その多くがめくれ上がっていたり、虫食いのように千切れていたりした。

当時、国鉄は経費削減のため、車体の帯を塗装ではなく、シールを貼るカタチで行っている車両があったが、その多くで同様のイタズラが見られた。

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すっかり日が暮れた中、相変わらず停車駅のいくつかで、旧型国電が留置してあった。

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何本もの旧型国電とすれ違い、それに乗れなかったのが悔しかったが、まだデビューしたての新型に乗ることよりも、廃止されようという旧型の方に乗りたいなどと考えるのは、恐らくは鉄道ファンだけだろうな、と思った。

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