1992年9月6日(日) 近鉄・北勢線

JR在来線の線路幅は、いわゆる狭軌と呼ばれる1067mmだが、新幹線は標準軌と呼ばれる1435mmになる。でも、日本国内には、その狭軌より狭い線路幅の鉄道がある。

その一つが762mmの線路幅で、一般的にナローゲージと呼ばれているのだが、かつて日本国内には、そのナローゲージの路線が数多く存在していた。それらは「軽便鉄道」と称され、規格が低いことで建設費用も大幅に安くできたので、日本全国に張り巡らされた国鉄路線を補完する形で、まだ自動車が普及していなかった戦前を中心に、各地に建設されたのだった。

しかし、戦時中に「不要不急路線」として金属供出で撤去されたり、戦後になるとモータリゼーションの波に押され、高度成長期の頃には各地で姿を消していった。

その中で、時代が平成になるまで生き残っていた路線がいくつかあった。その一つが、近鉄の北勢線だった。

その近鉄北勢線で、61年に渡って活躍していた220系という電車が姿を消すことになったのが1992(平成4)年の夏だった。

ナローゲージゆえ、向かい合わせに座れば、膝がぶつかりそうな狭さの車内だが、外観も幅が狭いので縦長に見え、パンタグラフが異様に大きく見える一方で車輪が小さく見えて、どこか不格好だった。でも、そこがユーモラスという感じがしたのも事実。

19920906kintetsu2

訪れたのは9月6日だったが、既にお別れのヘッドマークが飾られていた。まだ残暑厳しい中、クーラーも付いてない電車は、窓を全開にして走っていた。

19920906kintetsu3

数少ないナローゲージの路線だが、ローカル私鉄で経営が厳しいゆえに、何度も廃止の話が出たりした。が、その後、近鉄から三岐鉄道に移管されて、路線そのものは今も存続している。

写真の220系電車も一部が保存され、今も姿を見ることができるのは嬉しい限りだ。

19920906kintetsu4

鉄道関連ニュース

京都新聞の撮り鉄カメラマン“カジやん”が、1978(昭和53)年から現在に至るまで、京都を中心に日本全国で撮影した鉄道写真を紹介します。

注*掲載写真の中には、現在は地形などの変化で撮影することができない場所や、撮影対象そのものが存在しなくなったものも含まれます。必ずしも現状とは一致しませんので、あらかじめご了承ください。